Key word

  • データ同化
  • inflation, localization

はじめに

データ同化では,数値計算上でad hocに行われてきたテクニックがいくつかある. 数学的な理解がまだ少ないものについて整理する.

テクニック

Covariance inflation

Ensemble Kalman Filterにおいて,予測誤差共分散行列(Covariance) $ P^f $の縮退を防ぐ方法. 数学的には$ P^f $の固有値を大きくする操作と言える. $ h > 0 $に対して,additive inflation $ P^f \rightarrow P^f + \alpha I $は固有値の下限が保証されるので扱いやすい. 一方で,multiplicative inflation $ P^f \rightarrow (h+1) P^f $は固有値の下限が$ 0 $になりうるので扱いが難しい.

Localization

物理モデルの遠方相互作用が小さいことを仮定して,計算から遠方の効果を除く方法. 対角付近以外の成分が0となるlocalization matrix $ \phi $が用いられる. $ \phi_{i,j} = \rho(d(i,j)/l) $という各成分の距離に基づく形をしている. 近年は物理モデルの定式化とlocalization時の評価についての研究が出てきている.

Covariance localization

グリッド間の誤差相関を表す予測誤差共分散行列 $ P^f $について $\phi $と成分ごとの積をとることで,対角行列に近い$ P^f \circ \phi $が得られ,$ P^f $のrankが改善される.

Observation localization

同化する変数の位置から遠い観測値を同化に用いない方法. 数学的な定式化をまだ見たことがない.